特許とは
特許とは、発明の保護と利用を図ることを目的として定められた、発明を保護するための制度です。新しい技術を特許庁に出願して登録し、公開されるのと引き換えに一定期間の独占権を得られます。
発明とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいい、特許発明とは特許を受けている発明のことをいいます。
発明を完成させたときに、特許権という独占的な権利を得たいと考えたら、願書に、発明の内容や権利を得たい範囲を記載した明細書、必要な図面、要約書を、特許庁に出願することが必要です。
特許権を取得した際には、その特許発明の実施をする権利を占有し、他人が実施するのを排除したり、他人に実施権を許諾したりすることができます。
したがって発明をしようという意欲が生まれることとなり、技術の進歩が進むことを期待して、この制度があるのです。
特許法では、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、産業の発達に寄与することを目的としています。
特許権とは
特許権は、特許庁に出願を行い、出願審査請求をして審査官による審査を通ったときに、設定の登録により発生します。
特許権の存続期間は、特許出願の日から20年です(特許法第67条)。
特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有します(特許法第68条)。
また、特許権を侵害する者、侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止または予防を請求することができる、独占排他的な権利です(特許法第100条)。
特許権侵害により損害が生じたときは、民法第709条に基づく損害賠償請求をすることができます。
特許権は、ライセンス契約をすることにより、他人に実施させることができます。実施権には、独占的な専用実施権と、非独占的な通常実施権とがあります。
特許の対象となる発明とは
特許法で保護される「発明」とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」です(特許法第2条)。
したがって、 次のようなものは発明に該当せず、特許で保護することができません。
・自然然法則自体
・単なる発見であって創作でないもの
・自然法則に反するもの
・自然法則を利用していないもの
・技術的思想でないもの
・発明の課題を解決するための手段は示されているものの、その手段によっては、課題を解決することが明らかに不可能なもの
永久機関のように自然法則に反するものや、計算方法、ゲーム方法にように人間の頭の中で人為的にとりきめられた法則などは、法律でいう発明ではありません。
また、特許を受けようとする発明は、産業上利用することができる発明でなければなりません。
特許出願の審査
特許権を得るには、出願書類、特に明細書によってその技術内容を一般に公開しなければなりません。そこで第三者は他人の出願した発明の内容を知ることができ、次の新しい技術を開発したり、他人の発明を実施させてもらうよう交渉したり、特許権の権利の期間が過ぎた後には自由に実施したりすることができます。発明の保護と利用が図られているのです。
特許権は独占的な強い権利ですから、あらゆる発明に権利を与えてしまうと、経済活動において困ったことになります。そこで特許出願は特許庁の審査官により審査され、審査を通ったものだけが特許査定となり、特許料を納付して初めて特許権が発生します。
審査には、発明の「新規性」(新しい発明)、「進歩性」(容易に考えつかないこと)、「先願であること」(同じ出願が前になかったこと)、明細書の記載内容が法に合致していること(発明の内容が開示され、記載不備でないことなど)、その他の要件を満たしているかどうかなどが判断されます。
実用新案とは
実用新案は特許と似た制度ですが、実用新案法が保護する考案は、あくまでも物品についての簡易な小発明であり、これらは中小企業や個人の手により生まれることも多く、また商品としてのライフサイクルも短いのが大半です。そのため発明のように長期間の独占権を与えるのは必要以上に第三者の実施を排除するという弊害があり、また、短期間の審査で権利化されるのが望ましいために、早期に登録するようにされています。
実用新案法で保護される「考案」とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作」です(実用新案法第2条)。簡単にいえば、小発明、簡易な発明ということになります。したがって永久機関のように自然法則に反するものや、計算方法、ゲーム方法にように人間の頭の中で人為的にとりきめられた法則などが保護されないことは、特許法でいう発明の場合と同じです。
また、「物品の形状、構造、組合せに係る考案」だけが実用新案法で保護される対象となっていますので、たとえば方法の考案や、物の製造方法などは保護されません。
実用新案権を取得した際には、その考案の実施をする権利を占有し、他人が実施するのを排除したり、他人に実施権を許諾したりすることができます。
権利の存続期間は出願から10年です。
関連条約
特許権をはじめとする知的財産権は、世界各国が各国ごとに、それぞれの法律を持っています。日本の法律は日本国内でのみ有効で、外国には効力が及びません。
そこで、外国で特許製品を製造販売したり、商標の使用をするためには、それぞれの国で出願をし、知的財産権の権利を取得しなければなりません。
そこで、知的財産権の国際的な保護を図るため、世界の130カ国以上が同盟を結んでいるパリ条約や、特許について方式統一を図るための特許協力条約(PCT)など、様々な条約が存在し、改正を重ねてきています。
[パリ条約]
工業所有権の保護のための条約で、特許、実用新案、意匠、商標、サービス・マーク、商号、原産地表示又は原産地名称、不正競争の防止について規定しています。
1883年3月20日に署名されて以来、改正が重ねられ、現在はストックホルム改正条約が最新のものとなっています。
各国ごとに制度の異なることを認めつつ、各国間の調整を図り、工業所有権の国際的な保護に貢献しています。
この条約では、同盟国の国民は他の同盟国において、その国の国民と同一の条件で発明などの保護が受けられることとして、同一の出願を各国にする場合の優先権制度などを規定しています。
わが国は1899年(明治32年)に加盟、現在130カ国以上の国が加盟しています。
パリ条約第4条の2では、各国の特許の独立が規定され、 同盟国の国民が各同盟国において出願した特許は,他の国において同一の発明について取得した特許から独立したものとするとされています。
各国での特許は、国際的調和の観点から、類似の制度としてそれぞれの国に設けられ、その国の特許はその国内での独占権として成立するものです。
[特許協力条約(PCT)]
特許協力条約(PCT:Patent Cooperation Treaty)は、パリ条約上の特別の取り決めで、国際的な特許出願について、特許の方式の統一と、調査の便宜、情報の提供、技術援助などを目的とする条約です。
1970年(昭和53年)公布され、わが国では同年10月から施行されました。
PCT国際出願は、各国ごとに特許出願をする煩雑さ、非効率さを改善するために設けられた国際的な特許出願制度です。
PCT国際出願では、国際的に統一された出願願書をPCT加盟国である自国の特許庁に対して所定の言語(日本国特許庁の場合は日本語若しくは英語)で作成し、1通だけ提出すれば、その時点で有効なすべてのPCT加盟国に対して「国内出願」を出願することと同じ扱いを得ることができます。
つまり、特許協力条約(PCT:Patent Cooperation Treaty)に基づく国際出願では、ひとつの出願願書を条約に従って提出することによって、PCT加盟国であるすべての国に同時に出願したことと同じ効果が得られます。
国際出願をすると、国際事務局による国際調査、国際予備審査を利用することができます。
国際出願の発明が、特許を取得したい国のそれぞれで特許として認められるかどうかは、最終的には各国特許庁の実体的な審査に委ねられています。
国内移行手続を行うにあたり、優先日から30ヶ月の期限が満了する前に、権利を取りたいPCT加盟国が認める言語に翻訳した翻訳文をその国の特許庁に提出し、その国が求める場合には手数料を支払う必要があります。
Q&A
Q.特許を出願する前に、調査をするべきですか?
A.発明をして、特許出願を考えたときには、事前に特許公報、公開特許公報、実用新案公報などを調査する必要があります。
特許を受けることができるのは新規性のある、まだ世の中に知られていない発明です。
また、公知になっている発明を組み合わせて、容易にできるものも特許にはなりません。
したがって、特許になりそうかどうかを判断する材料として、特許・実用新案調査をする必要があります。
さらに、既に同じものが特許になっていた場合には、新規の発明ではなく、特許にならないばかりか、逆に実施すると他人の特許権を侵害してしまうおそれもあります。
その意味からも、特許・実用新案調査が必要です。
調査の結果、他の特許出願の明細書と図面を検討し、それらとの違いを検討したり、新しいアイディアを考える資料として活用することもできます。
また、特許請求の範囲、明細書、図面の記載方法や内容が、参考になることもあります。
Q.特許を出願する前に、注意すべきことはありますか?
A.特許出願をして権利にするためには、新規性があることや、先願、つまり同一の発明についてもっとも先に出願したものであることが必要です。
したがって、出願はできるだけ早くすませることが必要です。
ただし単なるアイディアだけで、実施できる程度に具体的に記載していないと、出願は拒絶されてしまいます。
また、できる限り有効な権利範囲を検討し、最善の記載や、図面の作成を弁理士が行います。
内容についてよく打ち合わせをし、検討をして、出願書類の内容を練り上げる時間は必要です。
さらに、新規性を失わないためには、特許出願前に公表することは避けましょう。
出願前に発明を公表したり、販売をしたりすることは、新規性喪失の原因となるため、例外を除いては特許にならない拒絶理由となってしまいます。
一定の、発明の新規性喪失の例外規定の手続きはあるものの、公表しないことが原則で、学会発表や刊行物に公表したい予定があったとしても、まずは弁理士に相談することが必要です。