権利侵害への対策・警告・訴訟
侵害訴訟の前段階として、権利侵害になるかどうかの微妙なケースについて、調査・鑑定をして専門的判断をする業務を行います。
また、侵害に当たる可能性が高いと判断したときに、相手方に対し、通知書、警告書を送付する業務を行います。
また、侵害とは別に、弁理士は、特許庁による処分などに対する不服申立や、行政訴訟に関して訴訟代理人となることができます。
商標権侵害訴訟
商標権は、同一・または類似する業務について、登録商標と同一・類似商標の使用を独占することができる権利です。
商標権侵害に対しては、差止請求により使用をやめさせることができるほか、侵害の予防として侵害に関わる商品や広告物等の廃棄除去請求、損害賠償請求などをすることができます。
商標権者が、侵害に対して訴状を提出して訴訟を提起する際には、被告が使用する商標が登録商標と類似することを主張し立証する必要があります。
訴えられた被告は、反論する場合には、答弁書により、侵害ではないことの主張や、損害が発生しないか、あるいはより低額である等の主張をすることとなり、その証拠を提出し立証する必要があります。
裁判においては、通常、まず商標が類似するかどうかの判断をするために、双方が主張や立証を行います。
あるいは、単に普通名称・慣用名称や地名・品質表示などとして使用しているだけだから、商標が類似していても侵害には当たらないといった主張をする場合もあります。
侵害である可能性が高いと認定されそうな場合には、続いて、損害額の算定について、原告・被告が主張をしあうことになります。
被告が侵害行為により受けた利益、商品1個あたりの利益と販売数量、通常のライセンス料相当額、などの各種の算定により、主張を戦わせることになると思います。
最終的に判決に至ることもありますし、裁判の途中で和解を勧められ、裁判官が関与した形での話し合いとなることもあります。
特定侵害訴訟代理業務
特許庁が、特定侵害訴訟代理業務試験の合格者を発表した第1回が平成15年度でした。
このとき、私も合格することができました。
特定侵害訴訟代理業務試験は、2003年1月に施行された弁理士法により、弁理士に、知的財産の侵害訴訟での訴訟代理人となることが認められたことを受けて、「信頼性の高い能力担保措置」を講じた上で特許権等の侵害訴訟代理権を付与することになったものです。
初年度の合格者数は553名。合格した弁理士は特許権等の特定侵害訴訟に関して、弁護士とともに訴訟代理人となることができます。
水際業務(輸入差止申立等)
弁理士が行うことができる関税定率法に基づく水際業務は、政令により侵害物品の認定手続における、特許権者、商標権者などの権利者側の代理です。
輸入者側の輸入手続代理は通関業法に基づく通関士並びに弁護士が行います。
関税定率法の業務には、侵害物品の認定申立と、認定手続の中での権利者の代理、税関長の処分に不服がある場合の行政不服審査請求があります。
関税定率法21条1項5号では、特許権・実用新案権・意匠権・商標権、著作権、著作隣接権又は回路配置利用権を侵害する物品(侵害品)が輸入禁制品として規定されており、税関長は、所定の手続(4項)を経て、このような物品を没収廃棄したり、積み戻しを命ずることができます。
認定手続
税関長自らの判断もしくは情報提供に基づいて職権で疑義貨物についての認定手続が開始されます。
自己の商標権、著作権、著作隣接権又は回路配置利用権を侵害する貨物が輸入されようとしていることを知った者(権利者)は、輸入を差し止めるため、税関長に、その物品について上記の認定手続をとるように申し立てることができます。
1 税関長が認定手続の開始を権利者、輸入者双方に通知。
2 税関長が権利者に、貨物が侵害品にあたるという証拠提出、意見陳述の機会を付与。
3 税関長が輸入者に、貨物が特許権等の侵害品にあたらないという証拠提出、意見陳述の機会を付与。
4 税関長が権利者に、輸入者から提出された証拠等について、意見を述べる機会を付与。
5 認定の結果と認定の理由が両当事者に通知。
6 認定結果の通知前に、疑義貨物の廃棄等の理由で貨物が輸入されないこととなった場合、その旨を両当事者に通知して認定手続を終了。
輸入差止申立て
1 所定の事項を記載した申立書と疎明証拠を税関長に提出。
2 税関長から申立受理(又は不受理)の通知を送付。
3 税関長が申立を受理し、上記の認定手続をとった場合、税関長は、申請に基づき権利者及び輸入者に申立対象となった貨物の点検の機会を付与。
4 権利者の代理人として点検の申請書を指定期限内に提出し,点検を実施。
5 認定手続開始後は、認定手続と同様に実施。
6 申立受理後、税関長の判断で申立人(権利者)が供託金を納付。
財務大臣に対する手続
上記の認定手続または輸入差止申立手続に対する税関長の処分に不服がある場合、行政不服審査法に基づき、財務大臣に審査請求を行うことができます。
弁理士は、権利者の代理人として審査請求手続の代理をすることができます。