商品化権(マージャンダイジング・ライツ)
商品化権(マージャンダイジング・ライツ)とは、顧客吸引力のあるキャラクターなどの形状、肖像、名称などを商品化する権利をいいます。キャラクターなどには、テレビ、ラジオ、映画、ゲーム、漫画、小説などに登場する実在・架空の人物や動物、スポーツや音楽・演劇・演芸などに関する人物などが含まれます。
特に商品化権という権利が法律上あるわけではなく、デザインやネーミングなどが関係することが多いため、著作権法、意匠法、商標法や、不正競争防止法、民法などの法律で守られる権利について、商品化するキャラクター等に関する権利を総称しているといってもよいでしょう。
キャラクターなどに限らず、たとえばオリンピックのマークや大会などを利用する商品化、アート作品の複製による商品化、サインなどの筆跡の商品化など、広い意味で用いてよいと思います。
現実に、このような様々な商品化が行われていますので、それらをイメージしたほうが早いでしょう。
キャラクターの絵柄を商品化する場合には、著作権、著作隣接権、意匠権、商標権、その他の権利が関係してくることが多いものですが、これらを文房具として商品化する権利、印刷物として商品化する権利、広告として利用する権利、キャンペーンなどのCMに起用する権利などとして考えることができます。
当サイトで説明している各種の法律に基づく権利が複雑に関係しますので、一つ一つの権利処理について、ライセンス契約では規定しておくことが重要になります。
また、法律では明記されていない肖像権、パブリシティ権、その他のライセンスも関係することがありますので、契約による処理が大切になります。
アパレルデザインの権利
●デザイン画
著作権法で守られる著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するものと規定されています。
したがって服飾デザインをイメージ図案化したデザイン画は、著作物としてそれを描いたデザイナーに権利が帰属します。第三者が勝手に無断複製したりすることはできません。
しかしここで注意すべきは、著作権はその1枚のデザイン画の創作表現について生じる権利であって、それを元に量産した服のデザイン自体に及ぶものではないという点です。
服のデザインそのものは、工業的な(手工業も含む)量産を前提とする意匠権により守られる性質のものです。
●職務著作
ところで、アパレルメーカー等に勤務するデザイナーの描いたデザイン画は、誰に著作権が帰属するのでしょうか。
特許法の規定する「発明」は、職務上従業者がした発明は、原始的に発明者に権利が帰属するとされています。実際には対価を与えて会社側に譲渡するよう勤務規則に定められていることが大半です。
著作物の場合には、法人の業務に従事する者が職務上捜索した著作物で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表する著作物は、その法人等に権利が帰属することとされています。
新聞記事でいえば、無署名記事は新聞社の著作物、署名記事はその記事を書いた人の著作物ということになります。
デザイン画そのものを一般公表することはそうないにしても、同様の考え方が適用されるものと考えられます。
一方、フリーのデザイナーなどが、デザインの創作依頼を受けた場合には、原始的にはデザイナーにデザイン画の著作権や、服についての意匠権が発生します。
ただしデザイン契約で、デザイン料の対価には、こうした権利の譲渡も含まれるのか、本来明確にされるべきで、あやふやなままだと後日争いの元になりかねないことには注意が必要です。
●イラストレーション・テキスタイルデザインなど(一品製作と量産品)
たとえば、絵画やイラストレーションが、Tシャツなどにプリントされ量産される場合など、著作権の発生する一品製作の著作物が、物品として量産される場合には同時に意匠権としても権利が発生するケースがありえます。
著作権法でいう「美術の著作物」には、「美術工芸品」が含まれると規定されています。美術工芸品が一品製作のものに限られるのか、ある程度量産されるものでもよいうかについては微妙な問題があります。博多人形が、量産されるものであっても、相当の芸術性を有するために、著作権、意匠権の双方で守られる、とされた事例がありました。
しかし相当の芸術性が要求されますので、かなりデザインに工夫を凝らしたものであっても、通常の服飾やテキスタイル・デザインなどは、工業製品として、著作権ではなく意匠権の対象となるものと考えるべきでしょう。
なお、上記のイラストレーションの例では、著作物といえるのはあくまでも原画のイラストレーションですが、それをTシャツに応用した場合には、著作物の二次的利用となるので、著作者の許諾なしには製作できないこととなるのです。
●キャラクター
キャラクターに関しても、イラストレーションの一種として考えれば同様です。
ただし、著名な漫画のキャラクターを模倣された場合などで、その漫画のどのコマの絵を模倣されたのか特定できない場合がありえます。この場合にも著作権侵害が認められるのか。
これについては、著作権者に無断で「サザエさん」のキャラクターの絵が使われた事件で、連載漫画のどのコマの絵を模倣されたのかを特定できなくても、著作権侵害として認められたという裁判例があります。
●パターン(型紙)の権利
著作権法では、地図や、建築図面なども著作物として規定されています。
機械等の設計図なども、学術的な性質を有する図面、その他の図形の著作物であると解されています。
そうすると、型紙の創作は著作権法で守られるようにも考えられます。
しかしこのような場合、機械の構成を図面上に表したり、型紙をおこしたりする際の、作図上の表現の工夫に創作性が認められる場合に著作物と認められうるということであって、通常の型紙や設計図程度では、完成品の服飾デザインが相当の創作性を帯びていたり、型紙を製作する際に創意工夫がされていたとしても、型紙そのものが著作物と認められることは困難です。
型紙は、型紙自体は量産されるものでないとしても、新規なオリジナリティのある創作であれば、意匠権の保護対象にはなりえます。
●ファッション写真
写真も創作物の一種として、著作権法により保護されます。撮影者に著作権が帰属するのが原則です。
近年問題になったものに、パリコレの報道写真が瞬時にインターネット上において報道され、デザイナーサイドからの抗議の対象となったことがあげられます。
この問題は単に写真の著作権の帰属ということのみならず、情報の価値、報道の権利、服飾デザインが模倣されやすいという性質、デザイナーのパブリシティ権などが複雑に絡み合っていることなので、別途考察する必要があるでしょう。
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