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トニオ・クレーゲル(トーマス・マン、高橋義孝訳) -2004年08月08日

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「しかしトニオ・クレーゲルはなおしばらく冷えきった祭壇の前に佇んで、誠実というものが、この地上では不可能であることを見て、驚きと失望とを味わっていたが、やがて肩をすくめて、それから自分の道を歩いて言った。」

「自分は君たちを忘れていただろうか、と彼は自問した。いや、片時も忘れはしなかった。君も、ハンス。それからおまえも、金髪のインゲ。自分が仕事をしたのは、君たち二人のためだったのだ。そして自分は喝采の声を耳にするとき、こっそり周囲を見回してひょっと君たちもその中にいてくれるのではないかと思ったのだ。(中略)・・・・・・もう一度やり直す。しかし無駄だろう。やはり今と同じことになってしまうだろう。--すべてはこれまでと同じことになってしまうだろう。なぜならある種の人々はどうしたって迷路に踏み込んでしまうからだ。それは、彼らにとってそもそも正道というものがないからである。」

「彼は自分の加わることのなかった舞踏会に酔い、嫉妬の情に疲れた。昔と同じことだった、全く同じことだった。顔をほてらせて彼は薄くらがりに佇み、彼らのために、あの金髪の、生きいきとした、幸福な人々のために心を痛ましめて、やがて寂しく立ち去ったのだ。誰か来てくれなければいけないのに。インゲボルクは今こそ来てくれなければいけないのだ(中略)・・・・・・けれど彼女は絶対に来はしなかった。そういうことはこの世では起らぬのである。全く昔と同じことだった、そうして彼は昔と同じように幸福だった。彼の心は生きていたからである。しかし彼が現在の自分を作り上げた歳月を通じていったいそこに何があっただろうか--凝固、荒涼、氷結、そして精神、そして芸術であった。」

Posted at 00:41 | 生い立ちの記


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