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植物の新品種の保護に関する国際条約(UPOV条約1991年法) -2019年12月02日
1961年12月2日作成
1972年11月10日,1978年10月23日及び1991年3月19日ジュネーヴで改正
UPOV条約の締約国は、一般的義務として、「締約国は,育成者権を与え,これを保護する。」とされています(第2条 締約国の基本的義務)
締約国は,同盟国となり、同盟は,法人格を有し、所在地はジュネーヴとし、その常設機関がジュネーヴに置かれています。
条約の原本は、英語,フランス語及びドイツ語で作成され、アラビヤ語,オランダ語,イタリア語,日本語,スペイン語その他理事会が指定する言語によるこの条約の公定翻訳文が作成されます。
日本語の公定訳文は、特許庁のウェブサイトに掲載されています。
植物の新品種の保護に関する国際条約(UPOV条約1991年法)
内国民待遇や、同盟の運営等を除く主要な規定は、下記の通りです。
日本の種苗法はこの条約に加盟するのに合わせて規定が整備されています。
第3章 育成者権の付与のための条件
第5条 保護の条件
(1)[満たされるべき要件]育成者権は,次の要件を満たしている品種について与えられる。
(i) 新規性
(ii) 区別性
(iii) 均一性
(iv) 安定性
(2)[その他の条件]育成者権の付与に当たっては,前項に定めるものに条件を追加してはならず,また,前項に定めるものと異なる条件を課してはならない。ただし,品種には,第20条の規定に従い1の名称を付すものとし,出願人は,出願をする当局の属する締約国の法令に定める手続に従うとともに,必要な手数料を支払う。
第6条 新規性
(1)[要件]品種は,育成者権の出願日においてその繁殖素材(以下「種苗」という。)又は収穫物が次に掲げる時より前に育成者により又はその同意を得て当該品種の利用を目的とした他の者への販売その他の譲渡がされていない場合は,新規性があるものとする。
(i) 出願がされた締約国の領域において,出願日から1年遡った日
(ii) 出願がされた締約国の領域以外の領域において,出願日から4年遡った日。ただし,樹木及びぶどうについては,6年遡った日
(2)[最近育成された品種]締約国は,この条約又は従前の条約を適用していなかった植物の属及び種にこの条約を適用する場合は,最近育成された品種でそのような保護の拡大の日に存在していたものについては,前項に規定する他の者への販売その他の譲渡が前項に定める期限より前に行われた場合であっても,(1)に規定する新規性の要件を満たしているとみなすことができる。
(3)[一定の場合の「領域」](1)の規定の適用上,同一の政府間機関を構成するすべての締約国は,当該政府間機関の規則に定めがある場合は,当該政府間機関の他の何れかの構成国の領域において行われた行為を自国の領域において行われた行為とみなすために共同して行動することができる。そのような場合は,当該締約国は,その旨を事務局長に通報する。
第7条 区別性
品種は,出願時にその存在が一般に知られているすべての他の品種と明確に区別される場合は,区別性があるものとする。他の品種に関し,特に,何れかの国において育成者権の付与のため又は公認品種表への記載のための出願がされ,かつ,その出願の結果育成者権の付与又は公認品種表への記載が行われる場合は,当該他の品種は,その出願日から一般に知られているものとする。
第8条 均一性
品種は,有性繁殖をすること又は栄養繁殖をすることから生ずる特殊性から予測できる変異を除くほか,特性が十分に均一である場合は,均一性があるものとする。
第9条 安定性
品種は,繰り返し増殖させた後に又は特別な増殖周期がある場合にあっては当該周期の終わりに特性が変わらない場合は,安定性があるものとする。
第4章 育成者権の付与のための出願
第10条 出願
(1)[最初の出願の場所]育成者は,育成者権を最初に出願する当局が属する締約国を自由に選択することができる。
(2)[その後の出願の時期]育成者は,最初に出願した締約国の当局から育成者権を与えられる前に,他の締約国の当局に育成者権を出願することができる。
(3)[保護の独立]何れの締約国も,他の国又は政府間機関において当該品種の保護のために出願されていないこと又は保護が拒絶されたこと若しくは満了したことを理由として,当該品種に対する育成者権の付与を拒絶し又はその存続期間を制限してはならない。
第11条 優先権
(1)[優先権の期間]何れかの締約国において正規に品種の保護の出願(以下「最初の出願」という。)をした育成者は,他の締約国の当局に対する当該品種の育成者権の付与のための出願(以下「その後の出願」という。)に関し,12月の期間,優先権を有する。この期間は,最初の出願の日から起算する。出願の日は当該期間に算入しない。
(2)[優先権の主張]育成者は,優先権の利益を受けるためには,その後の出願に際し最初の出願に基づく優先権を主張しなければならない。その後の出願がされた当局は,その育成者に対し,最初の出願がされた当局の認証する当該最初の出願に係る出願書類の謄本及び双方の出願の対象である品種が同一のものであることを証明する見本その他の証拠を,その後の出願がされた日から3月を下回らない期間内に提出するよう求めることができる。
(3)[書類及び試料]育成者は,その後の出願をした締約国の法令により第12条に定める審査のために必要とされている情報,書類又は試料の当該締約国の当局への提出を,優先期間の満了後2年の期間内に又は最初の出願が拒絶され若しくは取り下げられた場合はその拒絶若しくは取下の後適当な期間内に行うことを認められる。
(4)[優先期間内に生じた事由]その後の出願は,(1)に定める期間内に生じた事由(例えば,最初の出願に係る品種に関する他の出願,公表,利用等)を理由として拒絶されることはない。これらの事由は,第三者の如何なる権利も生じさせない。
第12条 出願の審査
育成者権の付与の決定には,出願が第5条から第9条までに定める条件を満たすか否かの審査を必要とする。当局は,この審査において,当該品種を栽培その他の必要な試験を実施し,そのような当該品種を栽培若しくは試験の実施を指示し又は既に実施されたそのような試験の結果若しくは他の審査結果を考慮することができる。当局は,育成者に対し,審査のために必要なすべての情報,書類又は試料の提出を求めることができる。
第13条 仮保護
締約国は,育成者権の付与のための出願の時又は出願の公表の時から育成者権の付与までの期間,育成者の利益を保護するための措置をとる。当該措置は,少なくとも,当該期間内に行われた行為であって育成者が育成者権を与えられた場合は第14条の規定により当該育成者の許諾を必要とするものについて,育成者権を与えられた者が当該行為を行った者から公正な対価の支払を受けることができるものでなければならない。締約国は,育成者がその出願を通知した者についてのみ当該措置をとることを定めることができる。
第5章 育成者の権利
第14条 育成者権の範囲
(1)[種苗に関する行為]
(a) 第15条及び第16条に規定する場合を除くほか,保護されている品種の種苗に関する次の行為は,育成者の許諾を必要とする。
(i) 生産又は再生産(繁殖)
(ii) 増殖のための調整
(iii) 販売の申出
(iv) 販売その他の販売手段
(v) 輸出
(vi) 輸入
(vii) (i)から(vi)までに掲げる行為を目的とする貯蔵
(b) 育成者は,その許諾を与えるに当たり,条件及び制限を付すことができる。
(2)[収穫物に関する行為]第15条及び第16条に規定する場合を除くほか,保護されている品種の種苗を許諾を得ないで用いることにより得られた収穫物(植物体全体及び植物体の一部を含む。)に関する(1)(a)(i)から(vii)までに掲げる行為は,育成者の許諾を必要とする。ただし,育成者が当該種苗に関して育成者権を行使する合理的な機会があった場合は,この限りでない。
(3)[一定の加工品に関する行為]締約国は,第15条及び第16条に規定する場合を除くほか,(2)に規定する保護されている品種の収穫物を許諾を得ないで用いることにより当該収穫物から直接に生産された加工品に関する(1)(a)(i)から(vii)までに掲げる行為について育成者の許諾を必要とすることを定めることができる。ただし,育成者が当該収穫物に関して育成者権を行使する合理的な機会があった場合は,この限りでない。
(4)[追加し得る行為]締約国は,第15条及び第16条に規定する場合を除くほか,(1)(a)(i)から(vii)までに掲げる行為以外の行為についても育成者の許諾を必要とすることを定めることができる。
(5)[保護されている品種に由来する品種その他一定の品種]
(a) (1)から(4)までの規定は,次の品種にも適用する。
(i) 保護されている品種に本質的に由来する品種(保護されている品種自体が本質的に由来する品種でない場合に限る。)
(ii) 保護されている品種から第7条の規定に従って明確に区別されない品種
(iii) 保護されている品種を反復して使用することが生産に必要な品種
(b) (a)(i)の規定の適用上,1の品種が次の要件を満たす場合は,当該品種は,他の品種(「原品種」)に本質的に由来するものとする。
(i) 原品種(又はそれ自体が原品種に主として由来する品種)に主として由来していること。ただし,原品種の遺伝子型又はその組合せから生ずる本質的な特性の表現を維持していることを条件とする。
(ii) 原品種と明確に区別されること
(iii) 由来する品種を得る行為から生ずる差異を除くほか,原品種の遺伝子型又はその組合せから生ずる本質的な特性の表現において原品種に合致していること
(c) 本質的に由来する品種は,例えば,自然的若しくは人為的突然変異体若しくは体細胞変異体を選抜すること,原品種の植物体から変異個体を選抜すること,戻し交雑を行うこと又は遺伝子工学によって形質転換を行うことによって得ることができる。
第15条 育成者権の例外
(1)[義務的例外]育成者権は次の行為に及ばない。
(i) 私的にかつ非営利目的で行われる行為
(ii) 試験目的で行われる行為
(iii) 他品種を育成する目的で行われる行為,及び第14条(5)の規定が適用される場合を除くほか,当該新品種に関する第14条(1)から(4)までに規定する行為
(2)[任意的例外]第14条の規定に拘らず,各締約国は,合理的な範囲内で,かつ,育成者の正当な利益を保護することを条件として,農業者が,保護されている品種又は第14条(5)(a)(i)若しくは(ii)に規定する品種を自己の経営地において栽培して得た収穫物を,自己の経営地において増殖の目的で使用することができるようにするために,如何なる品種についても育成者権を制限することができる。
第16条 育成者権の消尽
(1)[権利の消尽]育成者権は,保護されている品種若しくは第14条(5)に規定する品種の素材であって締約国の領域において育成者により若しくはその同意を得て販売その他の販売手段がされたもの又は当該素材に由来する素材に関する当該領域における行為には及ばない。ただし,次の行為は,この限りでない。
(i) 当該品種をさらに増殖する行為
(ii) 品種を増殖することのできる素材を,当該品種の属する植物の属及び種を保護の対象としていない国に対して輸出する行為。ただし,輸出される素材が最終的な消費を目的としたものである場合は,この限りでない。
(2)[「素材」の意味](1)の規定の適用上,「素材」とは,品種に関して,次のものをいう。
(i) あらゆる種類の種苗
(ii) 収穫物(植物体全体及び植物体の一部を含む。)
(iii) 収穫物から直接に生産された加工品
(3)[特別の場合の「領域」](1)の規定の適用上,同一の政府間機関を構成するすべての締約国は,当該政府間機関の規則に定めがある場合は,当該政府間機関の他の何れかの構成国の領域において行われた行為を自国の領域において行われた行為とみなすために共同して行動することができる。そのような場合は,当該締約国は,その旨を事務局長に通告する。
第17条 育成者権の行使に関する制限
(1)[公共の利益]締約国は,公共の利益のために必要である場合を除くほか,育成者権の自由な行使の制限を行ってはならない。ただし,この条約に明文の規定がある場合は,この限りでない。
(2)[公正な対価]締約国は,育成者の許諾を必要とする行為を行うことを第三者に対して認めることにより前項に規定する制限を行う場合は,育成者が公正な対価の支払を受けることを確保するために必要な措置をとる。
第18条 通商を規律する措置
育成者権は,品種の素材の生産,証明,販売手段,輸入及び輸出について規律するために締約国がその領域において取る措置から独立したものとする。これらの措置は,如何なる場合においてもこの条約の適用に影響を及ぼすものではない。
第19条 育成者権の期間
(1)[保護の期間]育成者権は,一定の期間について与えられる。
(2)[最短の期間]前項の期間は,育成者権の付与の日から20年未満であってはならない。樹木及びぶどうについては,当該期間は,育成者権の付与の日から25年未満であってはならない。
第6章 品種の名称
第20条 品種の名称
(1)[名称の付与及び名称の使用]
(a) 品種には,その固有性を示すための1名称を付す。
(b) 締約国は,(4)の規定が適用される場合を除くほか,育成者権の保護の期間及びその満了後において,当該品種につきその登録された名称を自由に使用することが当該登録された名称と同一の名称についての如何なる権利によっても妨げられないことを確保する。
(2)[名称の性格]品種の名称は,品種の識別を可能にするものでなければならない。品種の名称は,品種を示すために慣習として確立している場合を除くほか,数字のみから成るものであってはならない。品種の名称は,品種の特性若しくは価値について又は品種若しくは育成者の識別について誤認又は混同を生じさせる虞のあるものであってはならない。品種の名称は,特に,品種の属する属及び種と同一の属及び種又は品種の属する属及び種に極めて類似する属及び種に属する既存の他の品種につき締約国の領域において使用されている如何なる名称とも異なるものでなければならない。
(3)[名称の登録]品種の名称は,育成者が当局に提示する。当局は,品種の名称が(2)の要件を満たしていないと認める場合は,当該名称の登録を拒絶し,所定の期間内に他の名称を提示するよう育成者に要求する。当局は,育成者権を与えるのと同時に品種の名称を登録する。
(4)[第三者の既存の権利]第三者の既存の権利は,品種の名称の登録によって影響を受けることはない。(7)の規定により品種の名称の使用を義務付けられている者による当該名称の使用が既存の権利に基づき禁止される場合は,当局は,他の名称を提示するよう育成者に要求する。
(5)[すべての締約国における同一の名称]1の品種については,すべての締約国において同一の名称を提示しなければならない。各締約国の当局は,品種の名称が当該締約国の領域においては適当でないと認める場合を除くほか,提示された名称を登録する。品種の名称が適当でないと認める場合は,当局は,他の名称を提示するよう育成者に要求する。
(6)[締約国の当局間の情報交換]締約国の当局は,品種の名称に関する情報,特に,名称の提示,登録及び取消を他のすべての締約国の当局に通報する。通報を受けた当局は,必要に応じ,通報を行った当局に対し名称の登録について意見を述べることができる。
(7)[名称を使用する義務]締約国の領域において保護が認められている品種の種苗の販売の申出又は販売その他の販売手段を当該領域において行う者は,当該品種の育成者権の保護の期間及びその満了後において,当該品種の名称を使用しなければならない。ただし,当該名称の使用が(4)に規定する既存の権利により妨げられない場合に限る。
(8)[名称と共に使用される表示]品種の販売の申出又は販売その他の販売手段に当たっては,登録された名称と共に商標若しくは商号又はこれらに類似する表示を使用することができる。この場合は,登録された名称を容易に識別することができるようにしておかなければならない。
第7章 育成者権の無効及び取消
第21条 育成者権の無効
(1)[無効の理由]締約国は,次のことが判明した場合は,その与えた育成者権を無効であると宣言する。
(i) 第6条又は第7条に定める条件が育成者権の付与の際に満たされていなかったこと
(ii) 主として育成者から提出された情報及び書類に基づいて育成者権の付与がされた場合において,第8条又は第9条に定める条件が当該権利の付与の際に満たされていなかったこと
(iii) 育成者権がこれを有すべきでない者に与えられていること。ただし,当該育成者権がこれを有すべき者に移転される場合は,この限りでない。
(2)[他の理由の排除]育成者権は,(1)の理由以外の理由で無効であると宣言されることはない。
第22条 育成者権の取消
(1)[取消の理由]
(a) 締約国は,第8条又は第9条に定める条件が満たされなくなったことが判明した場合は,その与えた育成者権を取り消すことができる。
(b) 締約国は,更に,育成者が求められた期間内に次の何れかのことを行わなかった場合は,その与えた育成者権を取り消すことができる。
(i) 品種の維持を確認するために必要な情報,書類又は試料を当局に提出すること
(ii) 権利の存続のために必要な料金を納付すること
(iii) 権利の付与の後に品種の名称が取り消される場合に,他の適当な名称を提示すること
(2)[他の理由の排除]育成者権は,(1)の理由以外の理由により取り消されることはない。